おひとりさまに聴く
Vol. 4
カフェのお客様
実は、30代前半から漠然と「ずっとシングルかもしれない」と思っていたんです。それならちゃんとキャリアをつくろうと考え、夢中で仕事をしてきました。振り返ると、30代は仕事に忙殺されていましたね。でも、40代になったとき、「せっかくおひとりさまなんだから、もっと自由に好きなことができるはずなのに…。もうちょっとわがままに自分の人生を生きたい」と思うようになったんです。それを機に、会社を辞めて独立することを考え、毎日の仕事を通じて専門性を高めることを意識するようになりました。
私の場合、何でもひとりでも楽しめてしまうほうですし、常に「こう生きたい」「こう暮らしたい」というものがあったからでしょうか。結婚に対して理想が高かったとは思いませんが、こだわりがあったのは確かです。まずは自分の人生を確立することを優先させてきたように思います。そのせいか、いまも自分にとって心地いい人生を歩むことに対しては貪欲ですね(笑)。30代のときに、自分のことをゆっくり考える時間がなかったことの反動かもしれません。
ええ。額装は、絵や写真などの魅力を引き立たせるために作品と額縁のマット部分を装飾することで、フランスで生まれたものです。額装にはまり、そこからフランスが好きになりました。普段、旅行するときは同行者がいるんですが、フランスだけは行きたいところへ行き、やりたいことをやれるよう、いつもひとり旅です。年1回くらいは旅行をしますが、同行者がいるときも1日か2日は、ひとりになれる時間をつくるようにしています。
ただ、最近、自由さを不自由に感じることもあるんです。ひとり旅って、朝起きたら「今日は何をしよう」「どこで何を食べよう」を考え、自分で決めなければなりませんよね。それが苦痛になる。何時にどこで何をするかが決められているパッケージツアーの人がうらやましく思えることもあります(苦笑)。それを旅行だけじゃなく、人生のいろいろな場面で感じることがあるんです。おひとりさまは、落ち込もうが何だろうが、自分で自分を支えなければなりません。自由だけれど、何でも自分で決断しなければいけないのは辛いなと思うことはあります。寂しいとは思わないけど、「私の代わりに誰かが決断してくれたらいいのに」と心の負担を感じることはありますね。
友達に相談します。会社を早期退職したときにも、まず住環境を整えようと思って新しい住まいを探したのですが、そのような重要な決断をするときに冷静な判断をしてくれたり、一緒に趣味を楽しめたり、精神的な支えになってくれたり、家族のかわりに友人に支えてもらっています。そういう意味で、いろいろな場面で助けてもらえる友人は多くいた方が良いし、大切にしたいと思っています。
自分の身体が動かなくなったときに人に迷惑をかけることはしたくないので、いずれは施設などに入ることになるだろうとは思っています。ですが、いまは九州でひとり暮らしをしている81歳になる母のこともあって、自分の将来までは考える余裕がないといいますか…。
母とは「ひとり暮らしができなくなったときには、私の家の近くにある施設に入る」という方向で話をしています。母自身も私と一緒に住むことは、考えていないようです。いまは、自分の将来も考え、施設を探している段階です。
幸い定年がある仕事ではないですし、必要としてくださる方がいる間は働き続けたいと考えています。母を除けば、何かをしてあげる家族もいませんから、誰かのお役に立てるうちは働いて、恩返しではないけれど社会に貢献したいという気持ちもあります。ただ、体力的なこともあって、年々こなせる仕事の量は減っています。仕事は続けるけれど、いまのような忙しい働き方は、あと2~3年くらいにしようと思っています。それに、仕事以外にもやりたいことがたくさんあります。たとえば、フランス語をちゃんと勉強したいし、写真ももっと極めたい。いままでは広く浅くいろいろやってきましたが、これからはやりたいことを絞って、それを極めるのが目標です。そのためにも、60歳になるまでに、この先やることを絞り込んでおきたいと考えています。