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プラチナライフ

おひとりさまに聴く

Vol. 2

大切なのは
自分に何かあった場合に「どうしたいのか」を決め
周囲の身近な人たちに伝えておくこと

南昌江さん

カフェのお客様

南昌江さん
南昌江内科クリニック院長
日本内科学会認定医、日本糖尿病学会専門医、日本糖尿病学会学術評議委員
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福岡市内でひとり暮らし。3人兄弟の3番目。50歳

自分と同じ病気の子どもの役に立つために、医師を目指す

南さんは、ご病気をきっかけにお医者さんを目指されたそうですね。

現在のペン型インスリン注射器

はい。14歳のときに、すい臓のインスリンを作る細胞が破壊される1型糖尿病を突然発症しました。1型糖尿病は、生活習慣などが原因で発症する2型糖尿病とは異なり、多くは子どものときに発症します。1日数回、自分でインスリンを注射しなければならないのですが、当時使われていたのは、太いガラスの注射器。痛かったうえ、自分で煮沸消毒しなければならず、大変でした。「なぜ、こんな珍しい病気になったのだろう」と、落ち込みもしました。

 ですが、高校1年生のときに糖尿病の子どもが集まるサマーキャンプに参加し、同じ病気の子が明るく過ごす様子を見て、自分と同じ病気の子どもの役に立ちたいと思い、医師を志しました。

  糖尿病になったことで、食事に気をつけたり、運動をすることが「当たり前のこと」として身についています。これも病気の“効能”かもしれませんね。

 

運動といえば、39歳のときにはじめてフルマラソンに挑戦され、いまでは毎年ホノルルマラソンにも出場されているとか。

12年間連続で参加しているホノルルマラソン
(前列左が南さん)

ええ。マラソンを始めたのは30歳の頃ですが、当時は「インスリンを注射し、血糖値をコントロールしながら長距離を走ることは難しいだろう。5キロが限界だ」と考えていました。でも、病気を抱えながらもいろいろなことに挑戦する患者さんたちの姿を見たり、医師仲間がフルマラソンで完走して感激するようすを見るうち、自分で自分に限界を作っていることに気づいたのです。

 子供のころの主治医に「きちんと血糖値のコントロールをすれば、何にでも挑戦できる」と言われたこともあり、39歳のときにフルマラソンに挑戦しました。完走できたときには、ものすごく感激し、体力的にも精神的にも大きな自信につながりました。

 「この感動を同じ病気の人たちにも味わって欲しい」と仲間を募っているうちに、一緒に走る糖尿病患者や医療関係者、患者の家族が増え、日本糖尿病協会に「Team Diabetes(糖尿病) Japan」というマラソンチームもできました。

 

母を見送り、私の役目は終わった。これからは自分自身の人生を送りたい

南さんもおひとりさまですよね。結婚についてはどうお考えですか?

「恋はいつもしています!」

実は、高校生のときに父から「病気があったら結婚はできないかもしれない。ひとりでも生きていけるような資格を持ち、経済力をつけなさい」と言われたのです。私自身は「自分に魅力があれば、結婚できるはず」と考えていましたし、私の患者さんにも、結婚し、子どもを産んだ人が大勢います。

 結婚を考えた人もいましたが、私が出会った男性は「結婚したら仕事を辞めて欲しい」とか、「仕事を減らして、家の中のことをしっかりやって欲しい」という人が多かったのです。そのたびに悩みましたが、「私は何のために医師になったのか」を考えると、結婚することでやりたい仕事を犠牲にすることはできませんでした。それを理解してくれる人であれば、結婚したいですね。

 ただ、今では、結婚に対する考え方が違ってきました。一緒に話したり、旅行したり、趣味を楽しんだりできるパートナーは欲しいけれど、この歳になったら家庭を作り子どもを育てるわけではない。だったら、わざわざ入籍したり、相手のお墓に入るのは嫌だなと(笑)。お墓は父や母と一緒がいいです。

 

わかります!お墓は自分の親と一緒に入りたい(笑)。                    ところで、南さんのご両親はご健在ですか?

父は13年前、母は昨年、他界しました。

 

最近、おひとりさまが両親を亡くすことの意味を考えているんです。「家族」と呼べる人を失うとどうなるんだろうとか…。お母様を亡くされて、不安になったりしませんでしたか?

私はずっと「母より先に死んではいけない」と思っていました。病気になったことで母に心配をかけてきましたから、その母に自分の面倒を見させたり、悲しませたりすることだけはさせたくないと思ってきたのです。父も母もきちんと見送れたことで、私の子供としての役目が終わったようにも感じました。あとは自分自身の人生を送ろうと思っています。だから、もう怖いものはないですね。

 仕事はずっと続けていきたいけれど、私に万一のことがあると患者さんに迷惑をかけることになります。そのときに備えて、昨年、糖尿病専門医を採用して、私のあとを任せられる体制を整えました。ほかに心配事があるとすれば、自分が認知症になって、周囲の人に迷惑をかけないかということでしょうか。

 

将来を考えてやっていることは、ほかにもありますか?

私の母は、お葬式はこうして欲しいとか、遺産はどう分けるかなどをきちんと決めてくれていました。それで、私も周囲の人のためにそうすべきだと。私自身に何かあった場合に病院をどうするか、私の資産や保険などをどうするかついては、病院の会計士さんと話をし、管理をお願いをしています。

 

自分のことを自分で決め、周囲の身近な人に伝えておく

お医者さんとしての考えをうかがいたいのですが、いま日本では在宅医療を推進していますが、おひとりさまはいつまで自宅で暮らし続けられるのでしょうか?

医療関係者などが「ひとりで暮らすのは無理だ。施設への入所や病院への入院が必要だ」と判断するまで、でしょうか。具体的には、食事や掃除、入浴、排泄などがひとりでできなくなったときです。その場合には、病院をご紹介します。

 また、年を取ると自分で適切な判断ができなくなる場合があることも理解しておくべきでしょう。家族がいれば家族が気づいて医師など相談しますが、ひとり暮らしの場合、誰にも気づかれないまま、病気が進んでしまうこともあります。

 

確かに心配ですよね…。どんなことをしておけばいいのでしょう?

病気などで通院していたり、かかりつけ医がいる場合は、医師や看護師が気をつけることができます。ですが、そうでない場合には難しい。気軽に相談でき、自分の健康状態を把握してくれている、かかりつけ医を持つこともひとつの方法ではないでしょうか。

 

お医者さんの立場から、おひとりさまに老後に向けてのアドバイスをいただけますか。

私の患者さんのなかには、「70歳を過ぎたら健康診断は受けない。癌になっても治療せず死にたい」という人もいます。医師の立場からは、癌でも早期であれば治療可能なので健診は勧めますが、本人の希望ですから、カルテに記入するとともに「ご家族にもきちんと伝えてください」といっています。

  私の場合は、いつも一緒に仕事をしている当院の副院長や友人、兄に話をしています。おひとりさまは、そういう友人が必要ですね。たとえば、延命措置をしないで欲しいとか、臓器提供したいという希望があるなら、そう伝えておく。でないと突然意識を失ったときに、救急車を呼んで心肺蘇生を受けた結果、脳死の状態でずっと生かされることもありえます。

 

 家族以外の人が「何もしないで欲しい」といった場合、聞いてもらえるものですか?

やはり、きちんと書面にしておく必要はあるでしょうね。それを手帳や健康保険証、連絡して欲しい人の連絡先などと一緒に携帯することも必要でしょう。

 

 どうもありがとうございました。

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   プレゼントの応募は締め切らせて頂きました。

 

 

 

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